【WIN5あるある#2】日本ダービーの夜、僕の夢を崩壊した意外すぎる存在

穏やかな日曜日の朝、ダイニングテーブルで主人公の30代ぐらいの男性が一人朝食(トースト、ドリンク)を食べていて、奥では奥さんと娘が団欒しているシーン。

日曜日の朝。今日は日本ダービー当日というのに、夕方からは仕事が控えている。とはいえ、あくまで自主的なもので、未処理のタスクをどうしても今日中に片付けておきたいというだけ。16時に家を出て会社でデスクワーク、それまでの時間は、競馬三昧である。

競馬三昧、結果を知るまでが至福の時間

主人公の自室。さながら仮想WINS。MacBookではJRAの生中継、iPadではnetkeibaと極ウマ、iPhoneからはラジオNIKKEI。三種の神器を駆使して、WIN5の世界に没入している

僕の部屋は、さながら仮想ウインズ。MacBookではJRAの生中継、iPadではnetkeibaと極ウマ、iPhoneからはラジオNIKKEI。三種の神器を駆使して、僕は今日もWIN5の世界に没入していた。

普段はWIN5一本勝負。でも今日はダービーということもあり、WIN5とは別に、レース単体でも買ってしまう特別な一日だ。例年通り、考えに考え抜いたダービーはWIN5では1点買い。レース単体では3連単1頭軸流し(マルチなし)という、潔い勝負をかけた。

ちなみに僕のWIN5の買い方は少しクセがある。1レース目は広く構え、最終レースほど絞る。なので最後の1レースだけを1点にすることはよくある話。決して褒められる買い方ではないが、それもまたWIN5をできるだけ長く夢見ていたいという、僕なりの楽しみ方なのだ。

さて、予想も終わり、WIN5締め切り5分前に投票完了。ダービーの馬券も買った。テレビ中継? いや、今すぐには見ない。夜にゆっくり録画で見るのが至福の時間。ということで、予定より少し早めに会社に向かうことにした。

情報遮断モード、発動

込み合った電車の中で、スマホも見ることなく、目を瞑って、電車に揺られるシーン

もちろん、これからが戦場である。情報遮断モードの発動だ。

なぜなら、出発時点ではすでにダービーは終了しているからだ。せっかく夜の楽しみに取っておいたダービーの結果が、道中の“目や耳”から入ってきてしまってはすべてが台無しになる。だからこそ、ここから先は細心の注意を払う必要がある。

スマホ・タブレットの通知を全オフ。SNSアプリも閉じる。ニュースサイトも絶対に開かない。万が一があってはならない。ウインズ帰りの乗客から会話が漏れ聞こえてくるかもしれない。だから電車ではAirPodsを両耳に装着、ノイズキャンセリングMAXで、外界との接触を完全に断つ。

会社に到着し、仕事に集中。たまにダービーのことが脳裏をかすめるが、結果は見ない。見たい。でも見ない。夜まで我慢。我慢の分だけ、夢は広がる。

仕事がひと段落し、梅田の駅へ向かう帰り道。街中の液晶ビジョンの電光掲示板が目に入る。「今・日・の・日・本・ダ・ー・ビー・・・」の文字が流れる。やばい、危ない、見るな、見るな――ギリギリで回避。セーフ。

帰りの電車も無事。外部情報なし。完全防御成功。

ふう、と肩をなでおろしながら、マンションのエントランスに辿り着いた。

油断の一瞬、夢は崩れ去る

マンションのエントランス付近で、管理人と遭遇。管理人は気さくなおっちゃんでニコニコしながら僕に話しかけている姿。主人公の僕は、聞いてはいけないことを聞いてしまい、愕然とした表情、半笑い、少し青ざめた、困惑した様子で、立ちすくんでいる感じのシーン。

そして事件は、ここで起きた。

いつもの管理人さん。気さくで、親切で、口が軽い。いや、普段はありがたい存在なのだが、この日に限っては……。

「日曜日なのにお仕事とは、ご苦労さんですなぁ。そやけど、今日のダービー、ロジャーバローズが来るとは思わへんかったなぁ!」

……は?

え?

え?

ロ・ジャ・バ・ロ・オ・ズ……???

まさかのネタバレ。

あの慎重を期して築き上げた情報シャットアウトの要塞が、管理人の無邪気なひと言によって、いとも簡単に崩れ去ったのである。

しかもその馬は12番人気、WIN5の最終レースにして1点勝負、さらにはレース単体でも1着固定の軸馬であるはずがなかった・・・。

一瞬にして、僕の中の何かがスッ……と静かに散った。

部屋に戻ってテレビの前に座ったが、もう見る気がしない。レース映像の再生ボタンに指を伸ばすこともなく、僕は布団に潜り込んだ。

WIN5は夢がある。だからこそ、夢の扱いには細心の注意が必要なのだ。

そして教訓。最大の敵は、意外と身近にいる。