【Dr.の眼】宝塚記念:過去10年レース傾向&勝ち馬分析(最新版)

上半期GⅠシリーズを締めくくる宝塚記念。春の王道路線を歩んできた強豪に加え、海外遠征帰りの実力馬や伏兵までが集うため、他のGⅠとは一線を画す混戦模様になりやすく、WIN5においても攻略が難しいレースのひとつです。今年は例年より開催時期が早まっており、各馬の臨戦過程や仕上がり具合にも例年以上の注意が必要です。

過去10年のレース結果をもとに、人気・枠順・脚質・ステップレースなど各項目の傾向を整理しました。今年のWIN5を予想するうえで、どの馬を押さえ、どの馬を切るべきか、その判断材料としてご活用いただければ幸いです。

宝塚記念:過去10年レース傾向(最新版)

この章で解説する内容は次の通りです。

  • 宝塚記念 過去10年の傾向【早わかりガイド】(最新版)
  • 宝塚記念の過去10年のレース結果一覧

宝塚記念:過去10年の傾向【早わかりガイド】(最新版)

宝塚記念の過去10年のレース結果を多角的に分析し、WIN5検討の基礎となる客観的なデータを項目別に整理しました。それぞれの傾向から、どのような事実が読み取れるかを見ていきましょう。

人気順の傾向

過去10年の勝ち馬10頭のうち、1番人気は(3•2•0•5)で3勝。2番人気は(2•0•3•5)、3番人気も(2•0•0•8)で、1〜3番人気の上位人気勢が7勝を挙げている。一方、残る3勝は6〜8番人気から出ており、中穴ゾーンからの勝利例も見逃せない。10番人気以下からは勝ち馬が出ておらず、波乱は中穴止まりの範囲に収まっている。

序列どおりに決まることが多い一方で、6〜8番人気の人気薄の勝利実績はWIN5的に見逃せない要素です。

枠順の傾向

過去10年の勝ち馬10頭のうち、最多の6勝を挙げているのは8枠(6•0•1•17)。次いで3枠が2勝(2•2•1•11)、2枠と5枠が1勝ずつを挙げている。1枠・4枠・6枠・7枠はいずれも勝ち馬ゼロで、なかでも4枠と6枠は(0•0•1•16)(0•0•1•19)と、3着が1回ずつあるのみと極端に苦戦している。但し、8枠の出走数が相対的に多くなる点は留意が必要。

出走頭数の影響を差し引いても、8枠優勢の傾向が色濃く出ており、「勝ち切れる枠」として評価すべきです。

リピーターの傾向

過去10年で宝塚記念を連覇したのは2020年・2021年のクロノジェネシスのみ。その他に、前年も馬券圏内に入っていた馬としては、2018年と2019年に連続2着となったキセキの例がある程度で、リピーターが複数年にわたり好走するケースはかなり限定的である。むしろ、サトノクラウンやミッキーロケットのように過去にこのレースで好走歴のなかった馬が勝ち馬に名を連ねた実績があり注意が必要。

過去の実績に引っ張られすぎずに、宝塚記念での好走歴がなくても、勢いと地力のある馬は積極的に評価したいですね。

性別の傾向

過去10年の勝ち馬10頭のうち、牡馬が5勝(6•7•5•93)、牝馬が4勝(4•2•5•17)騸馬は勝利なし(0•1•0•9)。全体の出走数に占める割合を考えれば、牝馬のこの数字は非常に高水準であり、牡馬優勢の傾向が続いていた中、リスグラシューやクロノジェネシスといったトップ牝馬が連続して勝利を収めており、時代の流れとともに牝馬の地力がこの舞台でも通用するようになってきたことがデータに表れている。

実力があれば性別に関係なく勝ち切れるレースなので牝馬という理由で評価を落とす必要はまったくありません。

年齢別の傾向

過去10年の勝ち馬10頭のうち、最多は5歳馬の7勝(7•4•5•37)。続いて4歳馬が3勝(3•1•5•30)を挙げており、この2世代だけで全勝を占めている。6歳馬は馬券圏内に4回入っているものの勝利には届かず、7歳以上は(0•1•0•25)と連対すらわずか1回にとどまっている。3歳馬の出走例は1頭のみであり、現実的な対象とはなっていない。

勝ち馬はすべて4歳か5歳に集中しておりWIN5ではこの2世代の中から軸を決めるのが基本戦略となります。

斤量別の傾向

過去10年の宝塚記念では、3歳馬の出走がなく、勝ち馬はすべて4歳以上。斤量は牡馬が58kg、牝馬が56kgで統一されており、実質的に全頭が定量戦での戦いとなっている。過去10頭の勝ち馬に牝馬が4頭含まれているが、2kg差が決定的な不利として働いている様子はなく、斤量差による明確な優劣は見られない。斤量ではなく、地力・適性・仕上がりといった要素で評価を組み立てるべきレースといえる。

斤量差がそのまま結果に直結するような傾向は見られないのでWIN5では他の要素を優先して判断したいところです。

騎手の傾向

過去10年の宝塚記念で複数回勝利しているのはルメール騎手のみで、他8年はすべて異なる騎手が勝ち星を挙げている。また、Mデムーロや短期免許で来日していたレーン騎手など、外国人騎手が計4勝を記録している。そして特徴的なのは、いわゆるリーディング上位の常連以外の騎手でも勝利を挙げている点で、騎手名や知名度に左右されない決着傾向が見られる。

騎手実績にこだわらず勢いのあるコンビや一発に賭けられるタイプを選ぶ方がWIN5的には効果的だと感じます。

オッズの傾向

過去10年の勝ち馬10頭のうち、7頭が単勝10倍未満に収まっており、このゾーンが基本線となっている。中でも1倍台は(2•1•0•2)で2勝、2倍台も(1•0•0•1)で1勝を挙げており、人気を集めた馬がそのまま勝ち切るケースは十分にある。一方で、単勝10倍台〜20倍台からも3勝が出ており、伏兵が勝ち切るケースも視野に入れておく必要がある。

1倍台であっても過信禁物だが、勝ち馬の多くが10倍未満に収まっており10〜20倍台の伏兵までが現実的な射程です。

所属の傾向

過去10年の勝ち馬10頭のうち、関西馬が6勝(6•5•10•95)、関東馬が4勝(4•4•0•24)。出走頭数では関西馬が圧倒的に多いものの、勝率で見ると関東馬がむしろ優秀な数字を残している。3着以内数でも関西馬のほうが多いが、勝ち切りという点においては関東馬も互角の実績を残しており、舞台適性の差は数字に表れていない。

出走数に惑わされず勝ち切る力があるかどうかを見極めれば関東馬でも十分に狙えるレースです。

脚質・上りの傾向

過去10年の勝ち馬10頭のうち、先行勢が7勝を挙げており、明らかに有利な脚質となっている。中団からも3勝が出ているが、逃げと後方からは勝ち馬が出ておらず、ある程度ポジションを取れないと勝ち切るのは難しい傾向にある。上がり最速馬(5•7•0•0)の勝利は10年で5例のみで、速い脚を使えるだけでは届かないケースが多く、展開や位置取りとのバランスが問われるレースといえる。

極端な追い込みや逃げは割引き、四角で中団より前に取り付きつつ瞬発力を兼ね備えた好位差しタイプが狙い目です。

ペースの傾向

過去10年の分布はハイペース5回、平均ペース3回、スローペース2回。阪神芝2200mはスタート後に緩やかな下り坂がある構造上、前半に速いラップが出やすく、自然とペースが上がりやすい傾向がある。そのため全体的に見ると、淀みない流れの中で地力が問われる展開になることが多く、直線も長くないため、極端なスローペースからの瞬発力勝負に持ち込まれるケースは少ない。2024年開催は京都芝2200m外コース

出走メンバーによる変動はあるものの、基本的にペースが速くなりやすいことを念頭に置いておくべきです。

ステップレースの傾向

過去10年の勝ち馬10頭のうち、最も多いのは天皇賞(春)組で3勝(3•3•3•33)。次いで大阪杯(2•2•1•16)とドバイSC(2•1•1•6)が2勝ずつ、残る2勝は目黒記念(GⅡ)と鳴尾記念(GⅢ)から出ている。GⅠ実績馬の直行が主流ではあるが、国内重賞を叩いて臨戦した馬の勝利もあり、格下ステップでも勝ち切った例がある点は見逃せない。ただし、いずれも一定以上の実績を持つ地力タイプであり、実績の裏付けは不可欠である。

GⅠからの臨戦が主流ですが、地力のある実績馬であればGⅡやGⅢ組からでも十分に勝ち切れると見ておくべきです。

宝塚記念:過去10年のレース結果一覧

阪神芝2200m(2024年開催は京都芝2200m外)

開催 着順 馬番 馬名 性齢 斤量 騎手 人気 単勝 厩舎 着差 上り3F 通過順位 ラップ

ペース
前走 着順
2024
13頭
曇•重
1 8 12 ブローザホーン 牡5 58 菅原明良 3 7.5 吉岡辰 2:12.0 34.0 ⑪⑪⑩⑦ 前半35.6 天皇賞(春) 2
2 6 9 ソールオリエンス 牡4 58 横山武史 7 16.9 手塚貴 2 34.0 ⑦⑦⑫⑪ 後半34.5 大阪杯 7
3 3 3 ベラジオオペラ 牡4 58 横山和生 5 11.6 上村洋 クビ 34.8 ③④③② S 大阪杯 1
2023
17頭
曇•良
1 3 5 イクイノックス 牡4 58 ルメール 1 1.3 木村哲 2:11.2 34.8 ⑯⑯⑬⑨ 前半34.0 Dubai Sheema C 1
2 3 6 スルーセブンシーズ 牝5 56 池添謙一 10 55.7 尾関知 クビ 34.6 ⑰⑰⑯⑫ 後半35.5 中山牝馬S 1
3 5 9 ジャスティンパレス 牡4 58 鮫島克駿 2 8.5 杉山晴 1 35.1 ⑫⑬⑪⑨ H 天皇賞(春) 1
2022
17頭
晴•良
1 3 6 タイトルホルダー 牡4 58 横山和生 2 4.2 栗田徹 2:09.7 36.1 ②②②② 前半33.9 天皇賞(春) 1
2 5 10 ヒシイグアス 牡6 58 レーン 5 9.5 堀宣行 2 35.9 ⑥⑥⑥⑤ 後半36.3 大阪杯 4
3 4 7 デアリングタクト 牝5 56 松山弘平 4 7.3 杉山晴 2 36.0 ⑩⑩⑧⑧ H ヴィクトリアマイル 6
2021
13頭
晴•良
1 5 7 クロノジェネシス 牝5 56 ルメール 1 1.8 斉藤崇 2:10.9 34.4 ④④③④ 前半35.1 Dubai Sheema C 2
2 1 1 ユニコーンライオン 牡5 58 坂井瑠星 7 27.8 矢作芳 2.1/2 35.1 ①①①① 後半34.7 鳴尾記念 1
3 2 2 レイパパレ 牝4 56 川田将雅 2 3.5 高野友 クビ 35.0 ②②②② M 大阪杯 1
2020
18頭
曇•稍重
1 8 16 クロノジェネシス 牝4 56 北村友一 2 4.1 斉藤崇 2:13.5 36.3 ⑦⑧⑦① 前半34.6 大阪杯 2
2 7 14 キセキ 牡6 58 武豊 6 14.2 角居勝 6 37.2 ⑭⑬⑧② 後半36.3 天皇賞(春) 6
3 6 12 モズベッロ 牡4 58 池添謙一 12 106.1 森田直 5 37.6 ⑫⑪⑪⑧ H 天皇賞(春) 7
2019
12頭
曇•良
1 8 12 リスグラシュー 牝5 56 レーン 3 5.4 矢作芳 2:10.8 35.2 ②②②② 前半35.5 QE2 3
2 1 1 キセキ 牡5 58 川田将雅 1 3.6 角居勝 3 35.8 ①①①① 後半35.3 大阪杯 2
3 8 11 スワーヴリチャード 牡5 58 Mデムーロ 6 8.8 庄野靖 2 35.7 ④④③③ M Dubai Sheema C 3
2018
16頭
晴•稍重
1 2 4 ミッキーロケット 牡5 58 和田竜二 7 13.1 音無秀 2:11.6 35.8 ⑦⑤③② 前半34.4 天皇賞(春) 4
2 7 13 ワーザー セ7 58 ボウマン 10 14.9 ムーア クビ 35.3 ⑫⑭⑬⑬ 後半36.3 Lion Rock Trophy 6
3 1 2 ノーブルマーズ 牡5 58 高倉稜 12 40.0 宮本博 3 36.1 ⑩⑨⑦⑦ H 目黒記念 2
2017
11頭
曇•稍重
1 8 11 サトノクラウン 牡5 58 Mデムーロ 3 9.0 堀宣行 2:11.4 35.4 ⑦⑥⑥⑥ 前半35.2 大阪杯 6
2 2 2 ゴールドアクター 牡6 58 横山典弘 5 12.7 中川公 3/4 35.4 ⑥⑥⑥⑨ 後半35.7 天皇賞(春) 7
3 7 8 ミッキークイーン 牝5 56 浜中俊 4 10.4 池江泰 1/2 35.5 ⑨⑨⑨⑨ M ヴィクトリアマイル 7
2016
17頭
晴•稍重
1 8 16 マリアライト 牝5 56 蛯名正義 8 25.1 久保田 2:12.8 36.3 ⑪⑪⑩⑥ 前半34.7 目黒記念 2
2 5 9 ドゥラメンテ 牡4 58 Mデムーロ 1 1.9 堀宣行 クビ 36.1 ⑬⑬⑩⑨ 後半36.8 Dubai Sheema C 2
3 2 3 キタサンブラック 牡4 58 武豊 2 5.0 清水久 ハナ 36.8 ①①①① H 天皇賞(春) 1
2015
16頭
晴•良
1 8 16 ラブリーデイ 牡5 58 川田将雅 6 14.2 池江泰 2:14.4 34.8 ②②②② 前半36.0 鳴尾記念 1
2 3 6 デニムアンドルビー 牝5 56 浜中俊 10 31.3 角居勝 クビ 34.0 ⑮⑮⑭⑭ 後半35.0 天皇賞(春) 10
3 1 1 ショウナンパンドラ 牝4 56 池添謙一 11 99.2 高野友 1.1/4 34.7 ⑦⑥⑥⑦ S ヴィクトリアマイル 8

宝塚記念:過去 10年のレース傾向から見る勝ち馬分析

宝塚記念は、道悪・多頭数・非根幹距離といった要素が絡むことで、実力馬と伏兵の明暗がくっきり分かれる一戦。ここでは過去10年の勝ち馬を振り返りながら、「なぜその馬が勝ったのか?」をWIN5的な観点から読み解いていきます。

実績、臨戦過程、展開、馬場、そして人気とのバランス──それぞれの勝ち馬に共通する“拾えた根拠”を掘り下げていくことで、今年の攻略にも通じるヒントが見えてくるはず。

2024年】 ブローザホーン

日経新春杯を勝ち上がり、天皇賞・春2着と、GⅠ級相手にも善戦していたが、ここで待望のGⅠ初制覇。11番手追走から上がり最速タイの末脚で差し切る内容は、瞬発力と立ち回りの巧さが噛み合った好内容。例年より落ち着いた流れになったのは、京都開催に替わった影響も大きく、展開面も味方した形。WIN5的には、「開催条件の違い」に着目し、これまでと異なる適性が問われるレースで浮上する馬を拾えるかがポイントとなった。

【2023年】 イクイノックス

ドバイシーマクラシックからのぶっつけ本番だったが、世界最強馬という評価に見合う内容で、圧倒的な人気に応えた。道中は17頭立ての16番手という後方2番手から進め、3コーナーからスムーズに加速して進出。直線では馬群を外から一気に差し切り、力の違いを見せつけた。単勝1.3倍という支持に応えたこの勝利は、WIN5的には「人気馬でも不安視しすぎない」ことの重要性を示した一戦。実績・能力が突き抜けていれば、臨戦過程や輸送といった不安材料を乗り越える可能性は十分にある。

【2022年】タイトルホルダー

春の天皇賞を圧勝したあと、ここでは2番手追走からの押し切り。レース全体が前半33.9秒という非常に速い流れで進んだ中、自身のリズムを崩さず先行押し切りに持ち込んだ。勝ち時計2分9秒7のレコードは、馬場状態を含めても高い持続力とスピード対応力の証。父ドゥラメンテはスピード型のキングカメハメハ系、母父Motivatorは欧州的なスタミナ型という構成で、速さと粘りを両立する配合背景が光った。WIN5的には、ハイペース想定でも崩れない「地力上位の先行型」を押さえておけたかが明暗を分ける一戦だった。

【2021年】クロノジェネシス

前年の覇者で、宝塚記念連覇を狙って1番人気に推された実績馬。今回は、落馬負傷の北村友一に代わりルメールがテン乗りとなった点が大きな注目材料だった。レースは終始好位を追走し、直線で堂々抜け出す横綱競馬。良馬場でも不安はなく、総合力の高さを改めて証明した一戦。牝馬による連覇実績がないこのレース、迷いが生じる要素があっても、力が抜けていると判断すれば、信じ切る姿勢が求められるレースだった。

【2020年】クロノジェネシス

大阪杯2着からの直行で2番人気という立場だったが、仕上がりに不安はなく、実力的にも上位は明白だった。道中は中団からスムーズに進出し、4コーナーで早め先頭に立つと、そのまま押し切る完勝劇。上がり最速をマークし、2着に6馬身差をつけた内容は、まるで横綱相撲のような“格の違い”を示すものだった。多くの支持がルメール騎手鞍上の1番人気サートゥルナーリアに集まる中で、この馬の完成度を素直に信じて、迷わず買い目に入れられたかどうかが結果を大きく左右するレースとなった。

【2019年】リスグラシュー

前走は香港GⅠ•QE2Cで2着。エリザベス女王杯を制した実績がありながら、3番人気と評価はやや控えめだったが、序盤から2番手をキープし、直線もそのまま押し切る完璧な競馬。晩成傾向が強いハーツクライ産駒らしく、5歳で本格化を迎えてのGⅠ2勝目。迷いなく前へ出して勝ち切らせたレーン騎手の手腕も光り、WIN5的にはこの馬の成長度合いをどう評価できたかがポイントだった。

【2018年】ミッキーロケット

GⅠでは実績に乏しく、7番人気と伏兵扱い。それでも前走の天皇賞・春で見せた安定感や重賞戦線での地道な実績を評価できたかが鍵だった。1番人気サトノダイヤモンドが不安視されていた中で、代わりに浮上しうる馬を見つけられたかどうか。展開や上がり云々ではなく、人気と実績のズレに対して冷静に“買える根拠”を見出せたかどうかが問われた一戦だった。

【2017年】サトノクラウン

GⅠ馬としての実績は十分だったが、ムラのある戦績が嫌われ、3番人気での参戦。しかし、前走の大阪杯6着を嘲笑うかのような上がり最速タイの末脚で他馬をねじ伏せ、M.デムーロとの好相性が引き出したポテンシャルを改めて証明した。1.4倍の圧倒的1番人気キタサンブラックが凡走した一戦でもあり、“絶対視される人気馬の脆さ”と、“条件が揃った実力馬を拾えるか”の両面で、選択の妙が問われたレースだった。

【2016年】マリアライト

前年のエリザベス女王杯を制していたが、牡馬混合GⅠでは評価が分かれ、8番人気と伏兵扱い。それでも非根幹距離と稍重での実績が豊富で、宝塚記念2200mという舞台設定は明らかにプラス材料だった。GⅠ馬ながら人気の盲点となったこの馬を、舞台適性と地力で拾えたかどうかが最大のポイント。1.9倍で敗れたドゥラメンテへの信頼が揺らぐ中、見過ごされがちな勝ち筋に目を向けられたかが試された。

【2015年】ラブリーデイ

重賞では堅実な走りを続けていたものの、GⅠ未勝利という実績面の壁もあり、評価は6番人気までにとどまった。例年ペースが流れやすい阪神2200mにしては、この年は珍しくスローペース。その上、1.9倍の圧倒的支持を集めたゴールドシップがゲート内で立ち上がって大きく出遅れる波乱の展開。終始2番手を追走したラブリーデイには流れが完全に向き、人気馬が総崩れする中で押し切ってみせた。春の天皇賞を制し、宝塚記念3連覇を狙ったゴールドシップを凌ぐとは、レース前には想像しがたい結末だった。

【Dr.の眼】2025 宝塚記念:過去傾向から独自の視点でピンポイント解説

2025年の宝塚記念は、例年通りの阪神芝2200mで行われます。昨年(2024年)は京都開催だったため、阪神での施行は2年ぶりとなります。梅雨入り直後ということもあり、馬場状態や展開、枠順、さらには調教の内容まで多角的な分析が必要とされます。

ここでは、過去の傾向を踏まえつつ、今年ならではの注目点をピックアップしました。WIN5の検討材料としてもぜひ参考にしてください。

展開予想とペースの見立て

先行争いはメイショウタバルが主導権を握るか

今年の出走メンバーで過去に終始逃げて勝利した実績があるのは、リビアングラスとメイショウタバルの2頭のみです。ただ、リビアングラスは近走で控える競馬が続いており、主導権を握るのはメイショウタバルと見られます。

阪神芝2200mにしては落ち着いた流れに?

メイショウタバルが過去に逃げ切った3戦のうち、2戦が平均ペース、1戦がスローペースでした。ハイペースになりやすい阪神芝2200mではありますが、鞍上が武豊騎手という点を踏まえると、極端に流れることはなく、平均ペースで落ち着く可能性が高いと見ています。

過去傾向から見る有利な脚質

平均ペース時の勝ち馬は全て上がり最速

平均ペースになった過去3回(2017年、2019年、2021年)は、いずれも上がり3F最速の馬が勝利しています。これは小さいながらも見逃せない傾向です。

4角6番手以内+上がり最速が理想パターン

この3頭の共通点は、4コーナー通過時に6番手以内にいたことです。

  • 2021年:クロノジェネシス(7-8-7-1)
  • 2019年:リスグラシュー(2-2-2-2)
  • 2017年:サトノクラウン(7-6-6-6)

中団より前で脚を溜め、しっかりとした末脚を使えるタイプが好走していることが分かります。

後方一気は届かない可能性も高い

今年は17頭立ての多頭数。例年以上に馬群がばらけにくく、後方からの一気差しはリスクを伴います。買い目を絞る際には、位置取りと脚質のバランスをしっかり見極めたいところです。

馬場の影響と適性チェック 〜直前まで雨が残る影響は避けられない〜

阪神開催としては4日目とはいえ、前日までに断続的に雨が降っていた影響は少なからず残っているでしょう。開催当日までに馬場が回復したとしても、少なくとも稍重での実績は確認しておくべきです。馬場の悪化によって、脚質・枠順・血統の影響が色濃く出る可能性があります。

調教内容に見る陣営の本気度 〜直前追い切りで騎手が跨ったのは2頭のみ〜

グランプリレースでありながら、直前追い切りで実際の騎手が跨ったのは、ベラジオオペラ(横山和生騎手)とリビアングラス(坂井瑠星騎手)の2頭だけでした。1週前追い切りに騎乗した騎手は複数いますが、それでもこの状況は珍しいと言えます。調教過程、レース実績、騎手の意欲、さらにはコース適性までを総合的に考えると、横山和生騎手が所属地である美浦から栗東まで遠征して調教に乗ったベラジオオペラが最も評価を高くすべき存在であると考えられます。

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【WIN5格言集】シリーズでは、WIN5の予想をブラッシュアップするための独自の視点や秘訣をお届けしています。今回は「レースに騎乗する実際の騎手が直前 ...

コース実績から見る信頼度 〜ベラジオオペラの阪神実績が光る〜

今回の出走馬の中で、阪神芝2200mを勝った経験のある馬は1頭もいません。その中でベラジオオペラの【阪神競馬場成績:4-0-0-0】は特筆に値します。この舞台に強いことが実績からも明らかで、横山和生騎手も大きな自信を持って騎乗できるはずです。

サイン的視点での注目要素 〜阪神10R「ベラジオボンド」の勝利が暗示するもの〜

同日の阪神10Rに、ベラジオボンドが出走予定です。この馬が勝利するようなことがあれば、ベラジオオペラにとっても流れが向くという“サイン”的な要素になるかもしれません。

逆転候補2頭の評価ポイント

ロードデルレイは8枠×上がり性能が武器

川田騎手は1週前追い切りに騎乗しており、調教面では大阪杯と同じパターンを踏襲。前走はベラジオオペラに敗れたものの、上がり3Fでは0.3秒速い脚を使っています。また、夏場に弱い体質の同馬にとって、開催が2週早まったことはプラスに働く可能性があり、さらに8枠を引いた点も追い風です。

レガレイラは早め進出+外枠活かせば怖い

戸崎圭太騎手は有馬記念の時と同様に、1週前追い切りに騎乗。追い込み一辺倒という印象もありますが、有馬記念のように中団から早めに動く競馬ができれば、8枠の利を活かして最も怖い存在になるかもしれません。

番外データから見る過去の例外

逃げ馬勝利の可能性は?(2008年の再現)

WIN5施行後(2011年以降)は宝塚記念で逃げ馬の勝利はありません。しかし2008年にはエイシンデピュティが、重馬場と道悪が得意な鞍上・内田博幸騎手の好騎乗を活かして逃げ切り勝ちを収めています。

1枠の勝利例(アーネストリー)にも注意

過去10年では1枠の勝利例はありませんが、2011年まで遡るとアーネストリーが1枠(馬番2番)から終始2番手追走から押し切っています。近年では軽視されがちな内枠ですが、展開や馬場次第では再現もありえます。

以上を踏まえたうえで、人気や印象だけにとらわれず、今年ならではの「ハマる条件」を冷静に見極めることが、宝塚記念を的中へと導く最大の鍵となりそうです。

2025年6月11日